60% water

ヒトのからだの60%は、水で出来ている。

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エールと言う名の挽歌

凡人でも、それなりに忙しい7月。
7連勤のあと、一日の休みを置いて、5連勤。
今日出てきた次回のシフト表を見て、7月は6日しか休みがないことが決まった。

『ナメられると対人関係は終わる』と俺は常々思っている。

ひょっとしたら、ナメられてるのかもしれないと思い始めたシフト表。
予定がない限り休みの申請は出さない姿勢は今も変わってないが、だからといって、便利使いされてしまうのもどうかと思うわけで。
圧倒的に休みが少ないのに、わずかながらいらだった。

それもそのはず、今は高校野球神奈川県大会の真っ最中。
勝手ながら惚れてしまった、縁も所縁もない住吉高校の夏がまた始まったわけだ。
強豪校に囲まれている神奈川で、それでもめいっぱい、健気に翼を広げようとする姿勢を、観たいのだ。

連勤に挟まれた16日月曜。
『海の日』という名の祝日。
本来ならば、草野球の試合があるはず。
空には太陽が燦々と地上を睨みつけていた。
だがしかし、この日の中止は前日から決まっていた。
前日の15日、台風があたりを揺らした。
台風に備えるため、多摩川緑地管理事務所は各球場のバックネットを撤去してしまったそうで、それを取り付ける業者が連休明けでないと稼動しなかったというのが、前日から中止を決定した原因なのだそうだ。
泣いてもわめいても、できないものはできないわけで。
1ヶ月以上もボール遊びをしていない我々にとっては、手痛い中止となった。
それ以上に、まっつんのチームは『立ち上げ試合』だっただけに、中止の報はさらに悔しかったことだろう。
再戦しましょう、是非とも。

   ×     ×     ×

そんな気分で向かえた休日の朝。
太陽が腹立たしいほど高く上っていて、睨みつけては目を痛め、それでも柿生へ向かった。
なんのことはない、お金を下ろしに行ったのだ。
草野球の行事は中止になったけど、久しぶりの休み、なにかしたい気分でいっぱいだったのだ。

あてはなんにもなかった。
とりあえずお金を下ろした。
そのままミスドでお茶を飲んで、ドーナツを頬張った。
ケータイでTVKのサイトを見る。
すると、住吉高校が伊勢原球場で試合をすると言うことがわかった。
伊勢原球場までのアクセスを調べると、割と簡単にいけることがわかってしまった。

だけど、まだ早い。
10時半なのだ。
柿生をプラプラして、パチンコ屋へ入った。
2000円であたりをひくも、玉はどんどん減っていった。
そんななか、寝起きパンダのヤンヤンからメールが入った。

『11時から試合開始って新聞に書いてあるけど…』

慌ててパチンコ屋を飛び出た。
TVKの試合中継はいつも12時に始まる。
それくらいに始まるものなのだろうと、勝手に高をくくっていた。
柿生駅に小走りで向かい、来た電車に飛び乗る。
ヤンヤンも来ると言うが、少々時差があったため、先に球場へ乗り込むことに。

伊勢原駅から球場へ向かうまでのバスで、県立大原高校の女子生徒の群れと乗り合わせた。
バイトがある…等のそれぞれの忙しい事情を縫って、自分たちの高校を応援しに来たと言う姿勢に、ちょっとうらやましくなったりもした。



球場へ到着すると、試合の予定表が貼ってあった。
ついに彼らの試合をこの目で見ることが出来るのだな、と、感慨もひとしお。
思いに耽っているそば、塀の向こうからは嬌声が聴こえるのだ。
2年前、慌てて仕事を片付けて平塚球場へ向かったとき、球場へついた頃にはもう、横浜隼人にコールドで負けていたあの日が甦った。

試合が行なわれている嬉しさ余って、会場へ向かう階段で軽く足を滑らせたが大事には至らず、無事に目撃することが出来た。

緑に囲まれたすり鉢状の伊勢原球場は、美しかった。



スコアボードには

住吉 2?0 多摩

とあった。

住吉高校が勝っているのだ。
1回戦を完封コールドで飾っている住吉高校は、つまり今大会、まだ一つの失点も許してなかった。
その『失点0』の中央にいる、住吉高校のエース、黛君。



左腕投手だった。
いまどき珍しくなった、『大きく振りかぶって』投げる投手。
ゆったりとしたワインドアップモーションから繰り出される、クセのある直球に落差のある変化球は、相手打者の目を狂わす。
コントロールは適度に荒れ気味で、だからこそ、狙いダマを絞りにくくさせていたように見えた。
黛君の快投は続き、流れを多摩高校へと渡さない。
投手の担う役目は、チームによい流れを作ること。
相手によい流れを渡さないこと。
野球は他のスポーツに比べて『ゲームの流れ』と言うのが如実にわかるスポーツだけに、ピッチャー…特にエースの役割は大きい。
彼は背番号の重さに負けない投球を見せ、堂々とベンチへ戻る。
沸き返る住吉高校のスタンド。
応援団が音頭をとり、吹奏楽部がコンバットマーチを高らかに響かせ、ダンス部が華麗なチアリーディングで魅せる。
すべてはグラウンドでただただ白い球を追いかける、彼らの勝利を願ってのものだ。

応援も流れを作る追い風とした住吉高校は、さらに追加点を上げる。
相手投手の失投を逃さず、確実にミートしてランナーを還し、点差は4点に広がった。

リードが大きくなっても、黛君の投球は変わらない。
相手に的を絞らせないまま、ゲームは終わった。
見事、2試合連続の完封勝利で3回戦へとコマを進めた。



住吉高校の校歌が、伊勢原の空へと放たれたそのとき、多摩高校のナインは、長いようで短かった夏との別れを惜しみ、頬に熱い筋を作った。
誰よりも泣いていたのは、マネージャーだった。
彼女は、グラウンドで一緒になってたたかうことは出来ない。
だけど誰よりも、多摩高校の選手たちがここまでいかに練習してきたのかを知っていた。
その3年間の積み重ねがいま、たった一瞬で花を咲かせることも出来ずに散ってゆくことも、誰よりも誰よりも、感じていたのだ。
立っているのもやっとの様子の彼女は、誰よりも重い足取りで、ダグアウトの荷物を名残惜しそうにまとめていた。

試合が終わると、エールの交換が始まる。
死んだものが、これからまた更なる死地に赴くものへ、『俺たちの分まで頑張ってきてくれ』と、応援団同士の呼吸が始まるのだ。

泣いたマネージャーの心模様が伝わったのだろうか、まるで挽歌のようなエールだった。
応援団長は精一杯の声を張り上げ、鉢巻の裾が地面につかんばかりに胸を反り上げ、祝詞をあげたのだ。
住吉応援団も、それに応えた。

住吉もまた、いつかは死にゆくのだ。
生き残って、甲子園と言う名の女神に抱かれるのは、たったひとつなのだ。

   ×     ×     ×

2試合目、大原高校対横須賀高校は、8?6で大原高校が勝った。
両チーム共にエラーが続発し、ボークなどもあり、好ゲームとは言い難い様相であったが、勝ちは勝ちで、負けは負け。

負けてしまった多摩高校も横須賀高校も、まるで自分の人生の全てが今、ここで終わってしまったかのような空気だった。

そのとき、一陣の涼しい風が吹いた。

彼らの頬を伝う涙を、吹くにはまだ早い秋風がそっと慰めた。

『明日がある』

敗れ去った球児たちは、もうそれぞれの明日を始めている頃なのだろうか。

輝かしい君たちにだって、天才のイチローにだって、凡人の俺にだって、誰にだって明日はあるのだ。

明日が来るから、そろそろ備えるとする。

   ×     ×     ×

また観に行こうと思う。
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