60% water

ヒトのからだの60%は、水で出来ている。

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紀行文 ?『さ』のない国、さぬき?

おまたせ。

暇な人だけ、読んでね。

忙しい人は、暇な時に読んでね。

ではどうぞ。
そもそもこの旅を始めようとしたきっかけは、二つ。
ひとつは、マイルが貯まったことと、それを昨年末までに消化しないといけなかったこと。
もうひとつは、うどん。
この二つなのだ。
マイルのくだりはさておき、近年、私が急にうどんフリークになったのは触れておかねばならぬ。
『水曜どうでしょう』という番組で、四国お遍路巡りを何度かやっている。
その放送の中で、出演者である大泉洋が、お遍路の合間合間でおいしそうにうどんを食べるのだ。
時として、うどんを食べることを目的に、お遍路を頑張っちゃったりとか、そんな風景を番組で見ると、『本場のうどんはそんなに旨いのか?』という疑問がふと沸き起こった。
そこで、関東でも本場のうどんを食べさせてくれるところはないか、と、調査をしてみたのだ。
ネットだと無尽蔵に情報が引っ掛かる中、四国出身のネッ友から、『宮前区の綾は美味しかった』という情報を聞いたので、行ってみた。

これまでのうどんに対する認識をひっくり返してしまうほど旨かった。
このうどんを食べてしまったことで俄然、本場のうどんの味をいつか喰らってやろう…という気持ちになったのだ。



段取った日程は、平日の火曜、水曜、木曜。
年末までに使用しないとマイルが消えるという状況下の年の瀬、慌ててチケット取ったのがマイルキャンペーンの終わる2月の末だったってのがオチなんだけど、ともあれ、目的としているうどん屋のほとんどは土日が休みだったりする。
なので、妻を始め、お知り合いで同行できるような人は一切いない、完全無欠の一人旅。
一日千秋の思いで迎えた2008年2月26日、躍る胸を押さえ、不必要なまでに早起きをして、新百合ヶ丘のバス停に立ったのだ。



新百合ヶ丘から羽田空港まで、直行のリムジンバスが出ている。
もちろん、私は羽田空港へ、そんなにお世話になるケースのない人間ではあるけど、こういう便利なものがあることは知っている。
なので利用。
乗換えしなくて済むんだから、利用しない手はない。

『羽田』って、スゴイ名前だよね。
羽を休めるなにかが、いかにもありそうな名前。
空港があるエリアの名前としては、もってこい。
この名前って、空港が出来ることになってからついた名前なんだろうか。ふと疑問に思った。



高速道路が渋滞しているみたいで、迂回のため、予定より遅くに羽田空港へ到着した。
バスの中でケータイアプリの『三国志タクティクス』をやり続けていたためか、若干バス酔い。うえぇ…。
気持ち悪い頭をブルブルッと振って、チェックインカウンターへ。
初めてなのだ。一人で飛行機に乗るのは。
しかも、マイルで乗るわけで、初めて尽くしな中、JALカードを機械へ挿入。

『このカードはお取り扱いできません』

!!?

旅の冒頭から、超テンパる。
その辺にいた、JALの制服着た、若干綺麗めなお姉さんを捕まえて、説明を受ける。
どうやら私の持っているカードはIC機能付きで、チェックインカウンターの機械を使わなくても、ピッと1秒、まるでSuicaみたいにゲートを通過できてしまうらしい。
へぇ?。
ちなみにこのカード、JALカードSuicaなので、ホントにSuica機能が付いている。
…ので、私は、空港も駅も、ピッと1秒なのだ。うははは。





とりあえず、手荷物検査場でカードをかざして、席の入ったペラペラのチケットを受け取り、検査へ。

なんとなんと、手荷物検査に3回も引っ掛かる。

始めに、なれないICカードをかざしていたことでポッケからケータイ(三国志タクティクス起動中)を出し忘れ、うっかりゲートを通過。
んで、ピーっと鳴って、

「お客様、なにか金属をお持ちですか?」

って、やさしく聞かれる。
ポッケを探ると間もなくケータイ(三国志起動中)が。
ありゃま。

んで、ケータイ(三国志)を置いて、再びゲート通過。

ピー。

なんだろう…??

…あ、ベルト(バックル部分がごっつぅ鉄)だ。
さっきのやさしく聞いてくれたお姉ちゃんの眉間にしわが。ちょっと怖い。

「ベルトは取れますか?(やや怒)」

ベルトを取って、みたびゲート通過。

ピー。

……。

「あ、メガネかな?」

「メガネは関係ありません(怒)…お客様、こちらへどうぞ(激怒)」

んで、先に丸っこい輪が付いた金属探知機で、眉間のしわMAXのお姉ちゃんに体の隅々を調べられていると、ゲート脇にいた純朴そうなお兄ちゃんが、

「お客様、ブーツを穿いてらっしゃいます」

って。
私がブーツ穿いてゲートを通り抜けてたのはわかってたんだけど、お姉ちゃん(怒)が気付くだろうって、見て見ぬ振り。
がしかし、お姉ちゃんは俺のブーツに気付かず、乱暴に探知機の丸っこい部分で俺から金属を探し出そうとして、なかなか見つからなくて眉間のしわが、カルデラ火山みたくなったのを見るに見かねて、声を掛けてくれたのだ。

ブーツを脱いでゲートを通過。
無事スルー。

やっと飛行機に乗れます。



飛行機のシートについてから、やっと旅の計画を軽く練り始めた。
本当に、なんも考えてなかったのだ。
とりあえず、友人たちの勧めで『レンタカーは借りておけ』という言いつけだけは守って、借りました。四国は車がないと生きていけないと、四国関係者が口をそろえて言っていたのです。
ホテル、押さえてません。
行き先、決めてません。
初日はとりあえず、旨いうどんを食べたい。それくらい。
ガイドブックを眺める限り、うどん屋は昼のみの営業が多いので、どこへ行くかというプランを少しは飛行機搭乗中に決めておかないと。
初日だから、レンタカーと四国の交通事情に慣れるためにも、少し遠くのうどん屋へ。
そんでもって、初っ端からセルフ店や製麺所はハードルが高いので、まずは一般店へ行こう。
んで、2冊のガイドブックをくまなく見て決めたのは、香川県宇多津町の『おか泉』。
ここは出発前に、どうでしょうフリークで四国へ何度か行っているコバヤシさんから「ここはうまいッス!」と太鼓判を押されていたので、必ず行くつもりだったのだ。

『よし、一軒目はおか泉にしよう! …で、二軒目は…』

なんて、次を決めようとしたとき、飛行機は着陸態勢に入った。

四国、近っっ。

あっちゅう間についてしまった。
飛行機の窓外に見える、空港土手に植え込んだ植物で作られた『さぬき』の文字。
ますますうどん食いたい熱は高まる。



飛行機を降りて、受け取る荷物もないので、さっさと出口へ。



写真じゃわかりにくいけど、おいおいおい、またですかい?

すこぶる雨。

んも?、またかよ!

11月の沖縄に続き、またもや雨。
俺の天気運って、もうここまで来ると、飛び越えてスゴイわ。
いい加減そろそろシアワセにしてくれよ、神様。



レンタカー屋へ到着。
空港まで、レンタカー屋さんが送迎車を手配してくれたのだ。
お世話になったのは、マツダレンタカー。
旅行前にレンタカーを調べていたとき、四国2泊3日キャンペーンと称して、格安で車を貸してくれるのを見つけて、早速会員登録、即予約したのだ。

ちょっと驚いたのは、飛行機は割と多くの乗客がいたにもかかわらず、レンタカーへ足を運ぶ客は極少数だったと言うこと。
特にマツダレンタカーは、私を含めて2組しかいなかった。
もう一組は、これも驚いたのだけど、偶然にも飛行機で隣の列にいた若い女性4人組。卒業旅行かしら。
可愛い子4人(かなりかしましい)とオッサン単品が同乗することになり、少しばかり気恥ずかしい。
気恥ずかしくなるのも無理はないのだ。
機内においては、そんなことになるとはつゆ知らず、隣からのちょっぴり痛い視線を少しは感じながらも、持っていた2冊のガイドブックを穴の開きそうな勢いでガン見。
時折赤で○をうったり(行きたいうどん屋をチェックしてたのだ)、折りたたんである四国地図をがさがさと広げて、ひっくり返したりして道路を確認してたりしたのだ。そりゃあ、痛い目に晒されもするわな。

『どうせあんたがたとは飛行機を降りたらおさらばなのさ、『旅の恥は掻き捨て』っていうのよね。へへん! …君たちだって、なんだ、ずいぶん若いわりに『よもぎまんじゅう』的ななにかを厳重にサランラップで巻いたりなんかして機内に持ち込んで、口いっぱいに頬張ったりして…てゆうかちょっとうまそうだなォィ』

とか、勝手に思ってたのよね。
まさか同じレンタカー会社の、同じ車にしばらく同乗する羽目になるとは…ぬかった……
なんてわけのわからんネガティヴ妄想に駆られながら、キャッキャキャッキャとかしましい車内で『早くレンタカー屋につけ…』と願う私。
揺られること1分強、到着。

「まさか、あの軽自動車じゃないよね??」

なんて、その女子大生と思わしき4人組の一人が言う。

その軽自動車は、俺様のじゃ。

軽自動車にしたのよね。
だってさ、せっかくだからマニュアル車を運転したい…とか思ったんだけど、そこのレンタカーにはマニュアル車が置いてなくて。
ならば、こちとら気ままな独り旅なんだし、誰かに会う予定なんてサッパリないし、軽なら更に安いし燃費も掛からないし。。。
とにかく、メリット一杯なのだよ。アタシにとっちゃあ。

心の中で言い訳を一杯しつつも、契約書にサイン。
なんとなく恥ずかしいから、あの子達が荷物載せたり車の操作法を確認しているうちに、お先にとっとと失礼しちゃうのだ。

いざ、軽自動車へ乗り込む。

明らかに純正ではないと一目でわかるナビゲーション。
まるでケータイのディスプレイ並みに小さいナビは、予想通り、エンジンをスタートさせても一緒に電源は入らなかった。
むう、外付けナビめ。
どうやって電源を入れるのかをしばらく格闘し、やっとのことで電源を入れると、画面は明らかに

『壊れています』

と、さも言いたげに、現在地表示の場所から道が放射状に何十本も伸びている。
レンタカー屋の目の前には、一本しか道路がないのに。。。

車を降りて、レンタカー屋のおっちゃんに

「ナビが壊れているみたいなんですけど…」

って申し出る。
するとおっちゃんは車に乗りつつ、

「これねえ、電源を入れる場所が変わってるんですよ…」

って、もうその課題はクリアしているにもかかわらず、電源スイッチを入れようとしている。
しばらくナビのスイッチ探しをするので、

「…あのう、もう電源は入ってると思うんですね。んで、この表示(道路百本)はたぶん、壊れてるんじゃないかと…」

「あ、ほんとだ。これはオカシイね」

って、やっとそこまで理解してくれて、理解したうえでおっちゃんのとった行動は、若い人を連れてきた。
…なんだよ、そもそも機械いぢるのニガテなら、始めからそうすりゃ良かったじゃん。。。

若い兄ちゃんはナビを触ること数十秒、壊れていることを認識し、

「ちょっと待ってていただけますか」

と、小雨のそぼ降る中、ナビ回復を待っている私を一旦事務所へ戻してくれた。
件の女子大生4人組はもう、とっくに出撃している。むうう。
…ま、なにかに急いでいるわけでもないし、気楽に行こう。

トイレで用(どちらかというと大きいほう)を足してから、自販機でお茶を買って、飲んで、雨の降る高松の景色(なにもない)を、ぼけ?っと眺めていたら、さっきのお兄ちゃんが

「お待たせしました」

と、事務所で脳細胞を減らしていた私を呼びに来た。
うむうむ、治ったか。
って、外へ出ると…

く、車が違う……
軽自動車じゃなくて、普通自動車になってやがる。。。

どうやらあのナビは治らなかったみたいで、んで、軽四はあの車しかなくて、しかたがないので余っていた普通車(デミオ)をまわしてくれたのだ。
レンタル料金は軽自動車のまま、乗り心地の良い普通車へ。

おお、ラッキー。

…でも雨。



ナビへ、飛行機の中で、一軒目のうどん屋として決めた『おか泉』の住所を打ち込むと、勝手にルートを探索してくれて、道を教えてくれる。
ナビなんだから、当たり前だけど。
ナビゲーションシステムの付いている車を運転するケースは極稀なので、新鮮なのです。
実家の車にもナビは付いてるんだけど、当然ながら、実家近辺の道を走るのにナビゲーションが必要なわけがなく、だからこそナビの誘導に従いながら知らない道を走るのは、かなり新鮮。
そのナビのおかげで、知らなかった自分の一面を知ることが出来た。

「700m先の交差点を、右方向です。ローソンが、目印です」

って、ナビの中の人が言ったりするのよ。
そんで、俺は一々リアクションするのね。

「ローソン?? ローソンどころかコンビニすらあれへんがな! …あ!あったわ、ゴメン」

とか。

一々ナビがなにか言うたびに、俺も一々「了解!」とか、「ガデッサー」とか、答える。
わざとじゃなくて素でなってることにあるところで気付いて、独り言を意識してやめてみたんだけど、なんか調子出ないのよ。気持ちが悪いと言うか、収まりが悪いと言うか。
なので、好きにさせてみたら、まあ喋るわ喋るわ。

もともと独り言を喋るタイプだってのは、昔からいろんな人に指摘されて知ってはいたんだけど、ここまで独り言の多い人間だったとは。
一人なのにまるで誰かと喋ってるみたいに、この旅の最中はずうっと喋ってた。
メッチャ喋ってた。

いやまあ、厳密に言えば、ナビの人と喋ってたんだけど。
会話にゃあなってないのは承知なんだけど、それでも喋る俺は、こりゃもう、癖だな。

場合によっては気をつけないと、変なやつだと思われてしまうぞ、これは。



高松空港から車を走らせること約40分、『おか泉』到着。
機内の所でも書いたけど、いきなり『セルフ形式』のうどん屋へ行くのは気がひけて、ならば一般店(普通のお店みたく、席について、注文して、品物を店員さんが運んできてくれるタイプの店)で王者と謳われている『おか泉』にしようじゃないか、と。
空港から程よく離れているし、四国の道路事情を知るためにも、レンタカーに慣れるためにも、すぐ近くよりもちょっと遠くのほうがいい。
駐車場は満車で、店の裏にある第2駐車場みたいなところに車を停める。
店の前には軽い行列。
『おひるどき』と呼ぶにはもう遅い時間(14時ごろ)、しかも平日、そんでもって高松ではなく宇多津町。
でも行列が出来るってことはつまり、そこそこ期待していいぞ!…ってことだ。

おひとりさまなので、行列をよそに、すぐにカウンター席へ案内された。



目の前でうどんを打っているところを観ることが出来る、ベストなロケーション。
弥が上にも期待は高まる。

注文したのは、『冷天おろし』。
2冊のガイドブックにも、オススメになっていて、この店のメニューにも、冷天おろしだけは字のフォントが倍くらいで描かれてた。
値段もそこそこするけど、四国ツアーうどん一本目だし、腹減ってるし、これにした。

品物が出てくるまで、うどんを打っているところを見たり、周りの客層を見たり。
『うどんスタンプラリー』なるもののビラも置いてあった。
どうやらこのスタンプラリー加盟店へ行けばスタンプを押せるらしく、一つ目の欄に『おか泉』のスタンプの入ったビラを一枚貰うことにした。
加盟店がビラにずらりと書いてあり、どれもこれもおいしそうなうどんばかり。

周りの客に目を遣ると、お遍路の一団もいたりなんかして、『おお、俺は四国にいるんだ!』って実感が余計に高まったり。
他の客が食べているどのうどんも旨そうだけど、冷天おろしを食べている人が誰もいないことに気付くと、ちょっと心配になる。

「お待ちどうさまでした!」



1杯目 『おか泉』冷天おろし

おお、素敵なうどんが運ばれてきたじゃないか!!

大きな天麩羅の盛られたこの器に、そのままツユをぶっ掛けて、ネギと大根おろしを混ぜ合わせて、いざ、実食。

!!

この得難いモチモチとした食感、これはまさに、さぬきうどんぬ…
語尾に『ぬ』を入れてしまいたいほど、このうどんぬはもちもちなのだ。
天麩羅も揚げたてで外の衣はサクサクしてて、中のエビはプリプリ、カボチャはホクホク。
食べた瞬間、『キタァーーーー!!!』って、小田裕二の物まねをしている山本高広みたく叫びたくなた。
待った甲斐があったぞ!!四国へ来た甲斐があったぞ!!
ニヤニヤしながらも、もったいぶる様子もなく、かっ込んで、つるりと一杯食べてしまった。

おか泉様、ご馳走様でした!



デミオに戻って、次のうどん屋を探す。
今度はガイドブックからじゃなく、さっきおか泉で貰った『うどんスタンプラリー』のビラの中から探そう、と。
時間も時間だし(たいていのうどん屋は、お昼のみの営業)、開いてるところで、ここからそんなに遠くないところを。
それと、出来れば持ってきたガイドブックには載ってなくて、このビラでしか情報を手に入れることの出来ない店が理想。
そんな中、ガイドブック2冊とビラを見比べて、はじき出したのが『辻製麺所』。
写真のうどんは、掛けうどんにちくわの載った、かなりシンプルなうどんだった。
ビラには、
『年寄り夫婦二人でお待ちしています』って。
一軒目のおか泉がゴージャスだったので、シンプルうどんにしよう、と。
ここからも近い…はずだ。
『はずだ』というのは、このうどんラリーのビラにはうどん屋の住所は書いてなかったのだ。
最寄り駅と、そこからの簡単な地図は載っているんだけど、肝心要の住所がない。
駅からの距離を見ると、おそらくおか泉からかなり近い。
…で、ダメモトで、ナビに名前を直接入れてみた。

見事に引っ掛かった。多度津町…ここだ。
今どきのナビゲーションシステムって、すごいんだなあ。

ってなわけで、ナビに従い、一路、『辻製麺所』へ。
国道だか県道だかに面していた『おか泉』とは違って、ナビに従うまま、道は徐々に細くなり、キング・オブ・田舎道と呼ぶにふさわしい道へ。

「ほんとにこんなとこにうどん屋があるんかい?」

と、またナビへ話しかけるも、答えは

「間もなく左です」

しかない。
まあ、コイツの言うとおり行くしか方法はなくて、言われるがまま車を運転する。

「目的地周辺です。お疲れ様でした」

って言われた。

「どこ!?」

田舎道の真ん中で、車を停めてしばし見渡す。

・・・あ、あった。



お、おい・・・ホントに大丈夫なんかい!?

『おか泉』とは打って変わって、みすぼらしい佇まい。
行列の出来ていた『おか泉』とは打って変わって、行列どころか、客の気配すらなし。
それどころか、営業してるのかすら怪しいところだ。
雨も強くなってきて、とりあえず駐車場的なところへ車を停めて様子を見ていると、店のガラス戸越しにおじいさんがひょいと顔を出した。
『え?まさかお客さん??』みたいな感じで。
やってることがわかったので、『ええ、まさかのお客さんですよ』的な空気を出して、うどんラリーのビラを持って、車を降りる。

ガラガラ…と、絵に描いたような引き戸を開ける音。
昭和30年代を思わせるような、『アンティーク』なんて洒落た言葉では締めくくれないほど年季の入った店内。

俺「(怪訝)…こんにちは」

爺「いらっしゃい…?(怪訝)」

客席と呼べる机は、中央の大きなテーブル一つしかなくて、そのテーブルにおじいちゃんが座って、テレビ見ながらタバコをふかしている。
んで、客が来たと知ったおばあちゃんが慌てて厨房(らしきところ)へ入り、

婆「えっと、なんにします?」

って言うので、私は『うどんラリー』のビラを見てきたことを告げ、

俺「このうどんください」

と答える。
すると、テーブルのおじいちゃんがビラを見て、ああこれかといわんばかりに、

爺「スタンプ、これや」

って、持ってきてくれて、そのついでにおばあちゃんへ

爺「かけ(うどん)とちくわ」

と声をかける。

爺「どっからきなさったん?」

東京方面から一人で来たことを伝えると、いろいろ聞かれた。
東京でも旨いうどんは食えるのか、とか、うどんのつゆの色は黒いのか、とか。
そもそも私がうどんフリークになったのは、讃岐うどんを食べてしまったからであって、それまではうどんと言うと、好んで食べるものではなかったわけで。
その『好んで食べるわけではなかった』うどんの事をいろいろ聞かれた。
じいちゃんは、つまりあれらはうどんじゃないのだ、と言いたいのだろう。
少なくとも、ワシらの知ってるうどんじゃない、と。

東京の人がこの店へよく来るそうだ。
近くに少林寺拳法の総本山があって、その大会が開催されるたびに、東京の団体さんが必ずここへうどんを食べに来るそうな。

爺「んでな、その人らがここへ来るとな、こういうことをやるんよ」

とおじいちゃんは、テーブルにおいてあった醤油さしを右手に取ると左手の甲へ醤油を垂らした。
……失敗して、いっぱいこぼした。

爺「これはちょっと出しすぎたけどな(ふきふき)…で、こうやって醤油を舐めるんよ。そいでな、『ああ、やっぱりこの醤油や』って確認していきはるん」

そうなのだ。こっちの醤油は、旨いのだ。
今回の旅でも、醤油をお土産として買って帰るつもりだったのだ。
…なんてことをおじいちゃんに言うと、

爺「どこの醤油買ってくつもり?」

俺「カマダの醤油を…」

爺「!! これ、カマダや」

おじいちゃんは急にテンションアップして、醤油を舐めさせてくれた。…いや、わざわざ舐めさせてくれなくてもいいんだけどね、このおじいちゃんが可愛くて、つい。

うむ、舐めてみると確かに、仄かなダシの香りが甘くて、いかにもあのカマダ醤油っぽい。
カマダ醤油が買えるところ、探さなきゃ。

とかなんとか喋ってるうちに、おばあちゃんがうどんを持ってきてくれた。



2杯目 『辻製麺所』かけ+ちくわ

うどんは至ってシンプル。
おか泉のそれとは打って変わって、コシは柔らかく、ちくわも柔らかかった。
『昔と変わらぬ味』というのも、昔を知らない私でも、なんとなく頷ける。
イリコだしのつゆが静かにうどんを引き立てていて、嫌味な癖もない。
雨が降って寒くなった天候で、冷えた体をそっと温めてくれた。

うどん以上に、人に触れて温かくなったうどん、ご馳走様でした。



車に戻る。
雨はより強くなって、デミオのフロントガラスをばちばち叩く。
寒い。
…ので、暖かいうどんを食べよう。
てな魂胆で、車の暖房を最大にしつつも、ガイドブックとうどんラリーのビラを眺めて、3軒目の照準を定める。
出来ればスタンプラリーも進めたいので、ビラにも載っている店がいいなぁ、と。
なかなか車を発進させないのを心配しているのか、時折、あのおじいちゃんが窓から顔をのぞかせる。
ううむ、早く決めなきゃ。
暖かいうどん、あったかうどん。
釜揚げうどん。おお、これだ。

『長田in香の香』

ガイドブックにもビラにも、名物は釜揚げうどん、と。
ナビに店名を入れてみると、すぐに出てきた。
この微妙なネーミング、気にならないはずがない。
そんなに遠くないし、ここにしてみよう。

辻製麺所から車を走らせること5分(近ッ!)、到着。
広い駐車場に車を停めて、店内へ。
『一般店タイプ』とガイドブックにはあったんだけど、入ってみると、どうもセルフに近い匂いが…
店員が注文をとりに来るわけでもなく、それでいてなんとなくこちらを気にしているので、こちらもなんとなく立ち上がり、なんとなくレジのあるところへ。
そこでやっと、「ご注文は?」と訊かれた。
軽く気が動転してしまったのか、『釜揚げうどん』という言葉が飛んじゃって、その言葉を拾おうと一生懸命になって、出てきた言葉は

「えっと……『湯だめうどん』…」

「うちは『釜揚げ』になりますけど…」

「あ! それでお願いします」

みたいな、妙な遣り取りの末、釜揚げうどんに辿り着く。

店はシンプルな食堂タイプで、15時ごろだからか、客はまばら。
それでも出入りはあったりして、そこそこの人気があると言うことを物語っていた。
釜揚げの蒸気のせいか、窓ガラスは曇っていて。
♪曇りガラスの向こうは雨の街…とか心の中で歌っていた私はもう、旧人類。

「お待たせしました?」

と、もたもたと運ばれてきたうどん。



3杯目 『長田in香の香』釜揚げうどん

湯に浸されたうどん。
眼の前には刻んだネギと摩った生姜が置いてある。たっぷり使うぞ。
んで、写真には既にめんつゆがセッティングされてはいるけど、実はこれ、壷みたいなめんつゆ入れから自分で器に注ぐんだけど、この壷が、重くて熱いのよ。
つゆの量が重さで、つゆの温度が熱さに。
つゆを巧く注げなくて、火傷しそうになりました。。。

苦労した甲斐があったのか、うどんはかなり美味しく感じました。
湯に浸ったうどんは表面がつるっとしてて、食感はシコシコで、生姜がツンと鼻を刺激して、それでいて体を芯から温めてくれる。
このうどんはもったいぶって、ゆっくり食べました。
…いや、決して、熱くて勢い良く食べれなかったわけでは(略

ご馳走様でした。



いくらなんでもさすがにね、1時間強で3杯もうどんを食べれば、それなりに腹も膨れます。
がしかし、ここへは『うどん食い倒れ』で来ているわけだし、無理すればもう1杯くらいなら、食える。…と思うわけです。
けど、無理して食べたそれが、旨いと感じることが出来るのかと言うと、甚だ疑問。
だから、『お昼うどん』はここまで。

んで。

ぼちぼちというか、そろそろというか、『え? もう?』というか、つまり、ビール呑みたくなってきた。。。

とはいえ、そんなことを考えているここは、レンタカーの中。
う?む・・・

そこで思い出したのが、『こんぴらビール』。
出立前にコバヤシさんから薦められた地ビール。
コバヤシさんはビールが苦手。なのに「美味しく感じた」と、嫌ビール派の彼に言わしめたビール。
そりゃあ、飲みたいわけですよ。
んで、『こんぴらビール』って言うだけあって、琴平にあるわけですが、実はどのガイドブックにも載ってないのです。
そりゃまあ、地ビールまで網羅するガイドブックってのもなかなかないだろうけど。
とにかく、3軒目のうどん屋『長田in香の香』からそんなに遠くないので、『一生に一度は、こんぴら参り』の金刀比羅宮へ行ってみることにしたのだ。



ナビには『金刀比羅宮』で検索を掛けて、そこが示す場所へ、音楽を聴きながら向かう。
金刀比羅宮へ近づくにつれ、雨はどんどん強くなる。
しばらく走っていると、風景は雨に煙るも、なんとな?く、それっぽい山が右手に見えてきた。
ナビを見ると、どうやらあそこっぽい。
だけど、ナビが示す道は、徐々に徐々に、その山を遠巻きにしていく。
しばらく走るうち、だんだん道路が狭くなってきて、どこの工場なのかわからない、随分とみすぼらしい工場の横を抜けて、ついに傾斜のきつい山道へ。
この道、なんとなくあってるっぽいけど、本当にあってるのか??
ともすれば、物陰からジェイソンが出てきそうな山林なのだけど…

…で、山林を走ること数分。

通行止めの札が。

ぬうう…。

通行止めの札には

『こちらの迂回路にお回りください 案内図あります』

って書いてあるので、雨の中(傘を持ってないのだ)、降りて看板に近づいた。
けど、ない…。案内図はなし。ダミー広告かっつーの。
車に戻って、ナビで別ルート検索を掛けるんだけど、そこはさすがに機械っぽくて、くるっとまわって同じ道を示す。
この道が通行止めだから別ルートを検索してんのに。
この雨じゃあ、歩いてこんぴら参りする気にもならん。
とりあえず、こんぴら参りは諦めて、こんぴらビールだけでも見つけとかなきゃ。

ナビで近くの土産屋を検索すると、道の駅のような土産やさんを拾った。
すぐ近くだったので、行ってみたんだけど、こんぴらビールどころか、ビールすらない。
コーヒー牛乳はあったけど。

コーヒー牛乳を買い、一気飲み。いざ次の店。

「聞いたことすらないですねぇ」

…2店舗目、ここもなし。

ひょっとして、コンビニとかにあるのかも。
って、ちょっと大きめのコンビニを発見して、入ったんだけど、普通のビールしかない。
運転中だから、普通のビールは買っても仕方がないし、やめ。
アサヌマ君に頼まれていた、四国の求人情報だけ手に入れて、車に戻る。

疲れてしまった。
そんでもって、ビール呑みたい。とりあえず呑みたい。
なので、早くもここで、宿を押さえることに。
ガイドブックにある、高松市内の安宿に問い合わせてみることに。
あっさり空き部屋ゲット。4000円也。



移動すること約1時間、宿へ辿り着く。

超安っぽいビジネスホテル。部屋も狭く、若干汚い感じ。
んま、車の置き場所&夜に寝る場所ってだけだし、かまわないっちゃあかまわないんだけど、トイレに入ると前の客の残り香がして、かなり厭な気分に。
ナントカして部屋を変えてもらおうと画策するも虚しく敗戦。
ま、いいや。まずは酒じゃ酒じゃ。
ホテルのフロントで退屈そうにしている親父さんに、ここいらで飲み屋が連なっているところはないかと訊ねたら、少し歩いたところに『ライオン通り』というところがあって、そこにはたくさんの飲み屋が軒を連ねている…というのだ。
雨は多少落ち着いたものの、まだぱらぱらと降っていた。
そこでフロントの親父さんは俺が傘を持ってなさそうなのを汲み取ってくれて、貸してくれた。
グッジョブ、親父さん。

で、傘を片手に高松市内の中心街を観光がてら、ライオン通りへ。
もう日も暮れようという夕暮れ時、ぼちぼちと飲み屋は開いている。
どうせなら、土地のものを食べさせてくれたり、それこそ『こんぴらビール』みたいな、地ビールを置いているところはないかと各店舗のメニューをくまなく見ながら、ライオン通りを北から南へ。
飲み屋だけでなく、普通の酒屋さんもあったりするので、見つけるたびに入っては、

「地ビールありますか?」
「こんぴらビール知ってますか?」
なんて聞いてみるんだけど、しらんわからん…と。

一人だけ、

「確か…観音寺市(香川県の西端)にあったような気が…」

という答えをくれた人がいたんだけど、詳しいことはわからずじまい。ありがとう、ちくしょうめ。
あとはだいたい「知らない」ばっかり。
そもそも、『地ビール』という文化自体がアングラなのかもしれないなぁ…なんて思い始めながら、何を食べようかと言う矛先を決める。
うどん以外の何が名物なのか、サッパリわからないままライオン通りを南下しているうちに、どうやらライオン通りを過ぎてしまったっぽい。
…で、その先にも赤提灯の並ぶ通りがあるので、そのまま南下を続けてみる。
何が名物なのか、よくわからないのだ。
魚料理、中華料理、焼き鳥、焼肉、寿司に定食屋…
そんななかで、やたらと何度か目撃した店が、『鉄板ホルモン焼き』。
どれが名物なのかはわからないままなんだけど、私の胃はなんとなく、鉄板ホルモンが食べたくなっていた。
んで、そうなると、どの店がどこのビールなのかが私の店選びの基準となるわけで。
たいていの店がアサヒのスーパードライとキリンの一番搾り。
時折サッポロ(エビス含む)、稀にサントリー。そんな感じ。
珍しいビールを置いてそうな店は残念ながらなくって、なので、サントリーのプレミアムモルツを飲ませてくれて、しかも雰囲気のよさそうな『カドゲン』というお店に入ってみることにした。

カウンターに通してもらって、まずはプレミアムモルツと鉄板ホルモンを貰った。



さっそく出てきたプレモル生と、目の前に飾ってあったモンドセレクションの楯とともに記念撮影。四国上陸後、やっと呑めるぞ記念。
後ろに『カドヂン』という地酒だか焼酎だかがありますが、この店はあれこれと珍しそうなお酒が並べてあって、酒飲みとしては好感度アップ。
でもでも。
今やワタクシ、神奈川県を代表するほどのビール?う?マイスター。泡以外にゃあ目もくれません。
野球代表でなく、神奈川県のビール代表なら、横浜高校でスタメンに名を連ねられそうな気がします。
ってなわけで、偽装神奈川県代表の私、鉄板ホルモンが来る前に、ちょろっと飲む。
泡が香ばしくて、たまりませぬ。いやあ、たまりませぬ。待ち望んでいた瞬間、到来。

2口3口、ビールを傾けている間に、件の『鉄板ホルモン』到着。



ホルモン、旨っ。
焼きたてほかほかジューシーで、ネギとモヤシと一緒に口へ放り込むと、ホルモンのモチモチ加減とネギモヤシのシャキッと加減が相俟って、素敵な食感に。

こりゃうめぇ。

他にも鉄板焼きメニュー(トンペイ焼きと、あとなにか1品)を頼んで、どれも美味しかったんだけど、そのあとの追加メニューはビールと鉄板ホルモン。それだけでいい。

ちょっと気になったのは、後ろの席にいた女性2人組。
結構いい雰囲気のお店で、お酒の種類も豊富だから女性でも入りやすい。
私がこの席の客で気になったのは、その片割れが誰かに似ている…と感じたから。
誰かに似ているんだけど、誰なのかがわからない。
どっかの女優?
…いやいや、そんなはずはありえない風貌。
女芸人?
…う?む、確かに芸人タイプの顔だけど、これといった人物が出てこない…。
だからって振り返ってまじまじと見るわけにもいかず。

ふとトイレへ立ち上がったときに、その人と目があって、そのときに気付いた。

…あ、中村紀洋(現中日ドラゴンズ)に似ている。

…なんとなく、残念だなぁ。

あと、この店に長居して気付いたのは、香川の人ってあんまり訛ってないのね。
訛りだけでいったら、三重県のほうが酷いわ。

なんてことを考えたりしつつ、それなりに鉄板ホルモンとビールを堪能して、いつのまにか帰っていた中村紀洋似の女性のことを思い出しつつ、帰路へ。

…んが、ちょっと道に迷って、帰り道がわからなくなってしまい、仕方なく、タクシーを捕まえて帰る。2メーターいってしもた。。。どこまで道に迷っとんねん、俺。。。



二日目。
朝は遅く起きた。
自分が思っていた以上に体は疲れていたみたいで、予定なら9時頃には出立しているつもりだったのに、チェックアウトギリギリの10時まで、小ぢんまりとしたホテルに居座った。
…というか、ある意味、寝坊だ。
目覚ましは掛けなかったし、キッカリと予定を組んでいたわけでもないから『寝坊』じゃないにせよ、寝坊に近い。
起きてからシャワーを浴びるつもりだったんだけど、時間の都合により、歯磨きしてから着替えて出る。
本日回るつもりのうどん屋はもう、昨日の飲み屋でガイドブック見ながら、2軒目まで決めていたのだ。
2軒目が、いつぞやに『ここだけは譲れない』と書いた、谷川米穀店。
よしりんからの忠告を胸に、ここへ行くのじゃ。
…とはいえこのお店の開店時間は11:00?13:00(麺売切れ次第終了)。
初日にいけなかったのは、空港に着いた時刻でもうここへは間に合わないだろうと踏んでいたからだ。
とはいえこの二日目も、11時開店となると、アサイチに訪問することは出来ない。
ので、まずは一軒目を、『かまたま』うどんが旨いと評判の『山越』へ向かうことにしたのだ。

今日も今日とて、デミオのナビとおしゃべりを楽しみながら、快調に四国の道を行く。
昨日は雨だったけど、本日は曇り。
いつ降り出しても不思議じゃない雲だけど、できれば降っては欲しくない。
だけど俺が好天を願うと決まって降り出すので、願わない。降れとも願わない。
現状維持で充分です。

『山越』のある綾川町へ向け、高松を脱出するとき、私の頭の中では

『今日あたりは、うどんでお腹が一杯になったら道後温泉まで足を延ばしてみようか』

なんて、思っていた。その矢先、道案内の道路標識を発見。

松山 156km

ひゃ、ひゃくごじゅうろくキロ。。。。ありえへん。。。

つまりここ(高松市内)から平均時速156kmで一時間、その半分の78km/hで二時間、更にその半分の39km/hで四時間。。。
いやまあ、いけないことはないのよ、うん。
でもね、帰りのことを考えると、躊躇してしまう。
3日目は現時点では、高松市内のうどん屋をめぐる予定なので、できれば今日のうちに高松で宿に入りたいと思うわけで。
となると、往復で8時間のドライブ。
いかにナビと仲良しになったといえど、そりゃさすがにキツイってか、移動に8時間は、せっかくの旅行が無駄じゃねぇかい?
なんて考えつつ、車を着実に綾川町方面へ向かわせていた。
山越へ近づいたときに、私の脳みそは『道後温泉、や?めた』となった。
アバウトなこの旅路、道後温泉はここでクリアと相成りました。。。



…で、到着。
天気は、30分強、車を走らせているうち、雲が多少は空に残るものの晴れてきていた。
だだっ広い駐車場に車を停めると、一本道の前方に山々が見えた。



高松の都会っぷりに目が慣れると、ここが異世界に感じてしまうほど、文字通りの『長閑』。
そうそう。こういうロケーションでうどんを食べたかったのですよ、私は。
なんて期待に胸膨らませ、ブーツのかかとを鳴らしながら駐車場から店舗へ。
『店舗』というか、その敷地内には入っているはず(うどん食ってる人たちがいる)なのに、その入り口がどこなのかわからない。
ここじゃないっぽいな…こっちかな…なんてうろうろしていると、どこかで見たことがある光景に辿り着いた。
見覚えのある壁に、ちょっとした行列…
映画『UDON』で、物語中に何度か『うどん屋前行列』のシーンが出てきていた、あの壁だ。
そうか、ここの店でロケをしていたのか。
なんて事に気付き、一人ほくそえんでその列に足を連ねる。

ついに『セルフ店』へ足を踏み入れた。
ガイドブックには、『初心者の人は前の人に倣って注文するように』とあったので、そうすることにした。
私の前に並んでいるのは、いかにも地元客のような初老のおじさん。間違いはなかろう。
おじさんに続き、引き戸をくぐって店舗内に入ると、狭い釜場に何人かの店員がいて、おばちゃんが「何玉?」とうどんの玉数を聞いている。
おじさんが「ふた玉。かまたまのやまかけ」と答えると、うどんの玉を2つ器に盛り、そこへとろろいもを摩ったもの(つまりやまかけ)に卵を落としたものが出てきた。
私も同じものにすることにした。
ただ私は、その『かまたまのやまかけ』に、天麩羅を一つトッピングした。
四国旅行へ来る前から、ガイドブックを読んでいてずっと気になっていたものがそこにあったのだ。
半熟卵の天麩羅をトッピング。
これで500円でおつりがくるんだから、驚き。

んで、その器を持ったまま、おじさんに続く。
おじさんは会計を済ませた後のその先の列に加わった。
そこは、うどんにつゆを入れるところだったのだ。
『あたたかいうどんのつゆ』と書いてあるポリタンクから、うどんへつゆを注ぐ。
私も真似して、つゆを注ぐ。
んで、カウンター席へ陣取り、箸を割り、やっと食すことが出来るわけだ。



4杯目 『山越』かまたまやまかけうどん(半熟卵の天麩羅つき)

麺をすすると、さすが讃岐の名店、ここも他と同様、温かいうどんなのに強いコシがある。
ただ、一口目で思ったのが、思った以上に味が薄かったのだ。
そう思ったまま2、3口食べ進めたそのとき、カウンターのテーブルにおいてある、あるものに気付いた。

『かまたま用 だし』

って、ダシ醤油的なものがそこにあったのだ。
…つまりアレかい?
前の親父さんに倣ってやった行為の中で、うどんへ『温かいうどん用つゆ』を入れたのは、間違いだったのかい??
かまたまには、これをかけりゃ、いいんじゃないのかい?
なんて思った矢先、隣に座った兄ちゃんがかまたまうどんにそれを掛けて食べ始めた。
さも当たり前のように。
なので私も恥を忍んで掛けてみた。

う…旨い…

くっそう、これが正解だったのか。。。
真実に気付いた私は、あの親父さんが実はなれてなかったのか、それともいつもああいう一風変わった食べ方なのか、つまり真似せんでもエエところを真似してしまったみたいなのだ。
出来る限り『間違えて入れてしまったつゆ』をすすり、つゆのせいでたぷたぷになってしまった器の嵩を減らし、減ったところで専用ダシを掛けて、食べた。
生卵とやまかけとの相性がバツグンで、さっきまでは『コシは強いけど味の薄いうどん』は突然、『すげえうまいかまたまうどん』に化けた。
件の半熟卵天麩羅も衣がぱりぱりの揚げたてで、中を割るととろ?り黄身が流れ出てきた。
この天麩羅にも専用ダシは有効で、2玉だったのにあっという間に完食。
というかもう一杯食べていきたいくらいだ。
…いかんいかん、このあとは『アイツ』が待っているのだ。胃のスペースは明けておかねばならぬ。

というわけで山越様、ご馳走様でした。



…さて。
ついに、あそこいくぞ。
ナビに『谷川米穀店』と入れる。
出た。
ナビの指示通りに車を進めると、先ほどの写メにあった、山の方面へと向かい始めた。

ナビってのは便利なんだけど、これはつまり、『便利すぎるもの』だ。
これの指示通りに行けば、少なくとも、行こうと思っているすぐ近くのところまでは教えてくれる。つれてってくれる。
となるとつまり、運転手は言うとおりに動いていればいいわけで、そうなると、土地勘と言うものが一切必要なくなる。
北も南もわからないし、そもそもわかる必要もないのだ。
だけどこの便利すぎる状況に慣れると、乗り込む予定だった軽自動車のナビみたいにぶっ壊れたら、陸の孤島にいるみたく、立ち往生してしまう。
ここどこ?…んで、どこに向かえばいいの?みたいな。
そんなことを思ったのも、山道に入ってただただ左右に車の頭を振られると、考えたくもなるわけだ。



こんな具合な道中で、道に迷ったら…
&ガス欠にでもなろうものなら…
&夜で誰も人が通らなかったら…

ひゃア怖い!

とビビって入るのかといえば、実はそうでもない。



山道が急で危険になればなるほど、テンションが上がっていく私。
カーブでハンドルを切るたびに「やっほい!!」とか叫んでいたり。
まるで『水曜どうでしょう』の世界に入っちゃったみたいな気分になったのだ。
水曜どうでしょうで四国のお遍路をやると、毎回出てくるのが、急で細くて見通しの悪い山道。
ここを通るたび、大泉洋の顔が緑色になって、車酔いに効くツボを、スゴイ形相で圧したり、それでも車に酔った挙げ句、もどしたりして。
そんなのを何度も観ていたから、

「おお、これがウワサの『四国の山道』か!」

なんて、テンションが上がってしかたがないのだ。うはは。





くるくる山道を登ったり下ったりしているうちに、山を抜けて平坦な道に出た。
目指す谷川米穀店は、まんのう町という山の中の町。
平坦とはいえ、この地をぐるりと山が囲む。
景色を見ると、いかにも盆地といった風景。山の斜面を削って平坦な土地を作り、そこへ家を建てている。
周りを囲む山々も個性的で、木々が生い茂っていたり禿げていたり、尖っていたり丸かったり。
冠雪している山もある。
…冠雪??
雪のせいで頭の白い山を見て、天気が若干悪くなっていることに気付いた。雲が再び厚くなっている。
まさか、雨じゃなくて雪なんか降り出すんじゃなかろうな…。なんて思いつつも、「目的地周辺です」なんていうナビ子(命名)の麗しい声にキョロつく。
店らしき建物は見当たらないけど、いかにもってな駐車場があった。
そこへ車を入れ、エンジンを止め、後部座席から上着を取り…なんて出撃準備をしているとき、ふと前を見たら…



すこぶる雪。

急に音もなく降り始めていた。
おいおいおい、初日は雨で、次は雪かよ…。
ってか、この車チェーンないぞ。
雪が積もった状態で、あの山道越えて戻れってか??ちっくしょうめ。

とにもかくにも、目的のいの一番としていた谷川米穀店はすぐそこ。まずはここじゃ。これを食わずして讃岐を語るなかれ。
駐車場から急ぎ足で降りていく人たちについていけば、店にありつくだろう。
…って、ついていけば、実は駐車場からすぐそこにあったということがわかった。
そのあまりにみすぼらしい風貌から、これがうどん屋だなんてわかるはずもない。
ガイドブックがなきゃ、ここを掘り当てるのは至難なんだろうな。

…で、列が出来ているので、並ぶ。



♪こなぁ?ゆきぃ? ねぇ… と、嫌味に歌いたくなる。
列と呼ぶほどそれは伸びてはいないんだけど、ただ、私だけ軒からはみ出てて、こげ茶色の上着の肩が徐々に白へと染まっていくのだ。
なかなか列は進まないので、雪見を。



これは谷川米穀店の入り口から振り返った景色。出口からの風景…と言ったほうが良いのかしら。
深々と降る粉雪。粉雪どころか、待ってるうちに牡丹雪になり始めた。
店の脇を走る渓流に、雪が音もなく吸い込まれていくのをぼけ?っと見ていた。
凍えながら。
中の店はあったかそう。
湯気のせいで窓は曇っていて、狭い店内で肩寄せ合ってうどんをすすっているのが見える。
早く食べたい…
団体と思わしき客が出て行って、私を含む、列を連ねていた一団がやっとこ店内に入れた。
入るとまず、カウンター的なところに並び、うどんを注文していく。
注文ったって、そばかうどんのどちらか、そんでもって、あったかいのかつめたいのかのどっちか。
ここへ来てそばを頼む人なんて、いるんだろうか。
まあ、地元常連客なら場合によってはあるのか。
私は関東からわざわざうどんを食べるために来ているわけで、まかり間違ったってそばなんか頼みません。
「兄ちゃんは?」
と、私を呼ぶ威勢の良い声が、釜場で麺をかき回している兄ちゃんから。
「うどん」
「あったかいのつめたいの」
「あったかいので」
「あいよ」
いや、本当は冷たいうどんで、ここのうどん屋のコシを味わいたかったんだけど、こんな寒くて、挙げ句雪まで降ってるってのに、そりゃあ、「あったかいの」って言っちゃいますよ。これはもう、本能による防衛心です、はい。
なんて考えてるうちにすぐでてきた。

手に取った器の中には、うおお、シンプルうどん!
本当に、うどんしか器に入っていないのだ!あらビックリ!

文字通りの『すうどん』へ、テーブルにあるネギをふり、芥子を少々。醤油少々。
両方と『少々』なのは、旅前にコメントくれたよしりんからの教えを踏襲したのだ。
これで見栄えはうどんっぽくなった。



5杯目 『谷川米穀店』あったかいうどん

『テーブルにあるネギをふり、芥子を少々、醤油少々』
…という、よしりんからの教えを踏襲…したつもりが、これでもちょっと芥子が多すぎたっぽい。よしりんなら、写真を見てわかるはず。
とにもかくにも、まず一口目は芥子の掛かっていない部分を。

暖かいうどんと言うのは基本的に冷たいうどんに比べてコシが死ぬと思うんだけど、これぁ若大将(釜場にいる兄ちゃん)、すごいね!
HARIBOのグミか!ってくらい、コシ。
しかも暖かいからツルツルしてやがるのよ。
それでいて、少しだけしか掛けていない生醤油がうどんの塩味を引き立てていて、これぞまさしく『キング・オブ・すうどん』だった。
芥子の部分を食べると、いやあこれ、辛いよ、よしりん。
迂闊だった。
うどんの麺だけでこれだけ楽しめると知ってれば、あとは醤油少々ネギ少々だけでよかったのかもしれない。
搗きたての餅みたいにしなやかで、それでいてコシが強い。
味ももともとうどんの生地に練りこまれている塩だけで、ひょっとしたら充分だったのかもしれない。
くそぉ、悔しいのは、芥子だ。
芥子はいらんかった。
次ここへ来る機会があったら、芥子はやめとこう。
というか、正直2杯頼むべきだった。
うまかった。圧倒的に旨かった。
アブラなんて使っちゃあいないのに、脂が乗っていた。不思議だ。
これでなんと一杯120円也。おそろしや。
しかも、これでも値上がりしてるのね。15円ほど。
これが食えるなら、値上がり上等、全然問題なし。

会計は食べ終わってから、厨房を通ってレジで支払う。
厨房を通るとき、メッチャいろんなものをガン見した。
うどん切りマッシーンもあったし、打って寝かせてある生地の玉もあった。
なにより、さっきから一人で釜をかき回している兄ちゃんがオットコマエ。ありがとう、兄ちゃん。旨かったぜ。

谷川米穀店様、本当にご馳走様でした。
香川へ来てよかった。



さぬきうどんは所詮、ファーストフード。
食うの3分、並んでる時間のほうが長かった。
その辺にあった自販機でお茶を買って、車に戻って眠っていたナビ子さんを起こして、さてさて、次はどこへ行こうか、と。
『山越』で2玉食べたのが効いたのか、さっきのうどんで結構お腹いっぱい。
次のうどんまで、ちょっと時間をおきたい。
レオマワールド行ってみようかしら…いやいや、男一人で遊園地て、ありえへん。
しかもこの天気…



ておい、ナビ子と向き合ってるうちに、吹雪いてるじゃないか!!
遊園地がどうとか、金毘羅山がどうとか、言ってる場合じゃないんじゃないか??
…んで、ヨースケカンピュータがはじき出した結論。

『温泉』

道後温泉は諦めた。
けど、別に普通の温泉なら、その辺にあるんじゃないかと。
そもそも、このロケーションは露天温泉なんかに入ったら最高なんじゃないかと思うわけですよ。
…で、このナビ子さんに「近場にある立ち寄り温泉」でググって貰った結果、割と近くにあることが判明。
大きめの道の駅に、立ち寄り湯があるとかなんとか。
んま、近いんだから、だめそうだったら違うとこにすりゃあいいんだし、この雪はしばらく続きそうだし、行っちまえ。

と、車を快調にスタート。

ゴォォォールっっ!…早っ!

ホンマにあっちゅう間や。
山間の道を走ること3分、すぐについてしまった。
ことなみという、道の駅。
渓流沿い(おそらくさっきの谷川米穀店の横を走っていた渓流と同じもの)の、やや大きめの道の駅で、平日の昼間にもかかわらず、訪れている人の数はそこそこ。
温泉へ来たのはいいんだけど、なんにも道具を持っていなかった。
ので、ここでタオルとバスタオルを購入して、ひとっ風呂浴びる。

私を含めて3人の客が、そこそこ大きめの温泉に浸かる。
大きい風呂に、たったの三人。ちょっといい気分。
煙る窓の向こうには黒い山肌。
その前を白い雪が横切る。絵に描いたような、まるで水墨画のようなモノクローム冬景色。
めがねをしてなくとも、その光景はおぼろげながらもわかる。
溜息をついて、風呂に入った。

雪を見ながらかれこれ40分ほど風呂に入っていたせいか、上がったあと、のぼせてしまった。
だから道の駅で少し休憩。
お土産を見たり、売店で売っていた瓶牛乳を飲んだり、店に掲げてあった周辺地図を見て(この辺がどこなのかサッパリわからなかったのだ)、次にどこへ行こうか思案していた。
外の雪は、少し弱くはなったものの、まだまだ降っている。ううむ。
考えながら、売店をウロウロ。
そこでビールとかも売っていたりして、うっかり買いそうになる。
…で、思い出した。
『こんぴらビール』。
あれを再び探しに行こう。
琴平方面へ、レッツらゴーゴー。



山道を走らせているうちに、いつのまにか雪はやんだ。
なんならすこし晴れてきた。
おお、やったぞ、晴れだ晴れだ。
単調な運転の中、少し気持ちが良くなってきた。
音楽はダフトパンク。
打ち込み音楽が基本なので、めっちゃデジタルな感じの音楽がデミオ車内を覆う。
とある曲の節で、

どん…どん…どん…うどん

こんなフレーズ(もちろん打ち込み音の空耳アワー)がループしていて、なんとなく、またうどんが食べたくなった。
出来ることならまた谷川米穀店のうどんが食べたいんだけど、なんせあそこの営業時間は短く、今引き返したって、きっとやってない。
んん?、琴平についてからなんか探すか…

なんて思っていたその矢先、

『元祖しょうゆうどん 小縣屋 すぐそこ』

って書いてある大きな看板を見つけたのだ。

ここで初めて、ナビ子の指示を無視した。
回頭して、小縣屋(おがたや)へ向かった。



看板から走ること20秒、すぐに見つけた。



しっかりした、大きな店の佇まいに、間違いなく一般店の匂いを嗅ぎ取る。
店の入り口へ向かう壁には、様々な大根の絵と、その大根に対する解説…うどん屋なのに、なんで大根??

「いらっしゃいませ!」

威勢のいい店員さんに導かれ、お一人席に。
メニューを見る必要もなく、「元祖しょうゆうどん一つください」と。
眼の前にひときわ大きな字で『元祖しょうゆうどん』なんて書いてあったら、それ頼むしかないでしょ。
「少々お待ちください!」
と、厨房へ消えると間もなく、これをもってきた。



ほほう、なるほど。
店の前に並べてあった大根解説はつまり、これか。
醤油うどんにまぶす大根か。
つまり、俺に待ってる間に摩れってか。
よっしゃ、やったろうじゃないか。

大根をおろしがねでゴリゴリ摩る。
そのときにふと気付いたんだけど、このカウンター席、どっかで見たことあるなぁ。ゴリゴリ。

…あ。

映画『UDON』で、小泉孝太郎演じる『うどん通ぶる男』が、間違って生醤油をうどんになみなみ掛けて食べるシーンだ。あれだ。
そうだそうだ、孝太郎はあの辺に、藤澤恵麻扮する彼女と一緒に座ってて、んで、『こうやって食べるんだよ』とか言いながら、メッチャ酷い食べ方したんだ。
その酷い食べ方に、何も知らなさそうな純朴な彼女役の藤澤恵麻がうっとりしている、あれだ。あの店だったのか。良く考えたら、今自分が座ってる席がおそらくカメラの位置だ。デジャヴのように映画のワンシーンを思い出した。
ってか、孝太郎、よくあれ食べたなあ。
その昔、徴兵を免れるために醤油飲んで体調悪くする…ってのを思い出した。
そんでもって、藤澤恵麻こそが高松出身だったり。
孝太郎は当然、元総理の子で高松とはなんの縁もなかろう。

なんて考えながら大根を摩っていたら、おろしがねが大根おろしでいっぱいいっぱいのタプタプ状態になった。
ちょっと動かしたら、こぼれてしまいそう。
なので、じっとうどんを待つ。

「お待たせしましたぁ!」

持ってきたうどん。
器を机に置いた衝撃で、大根おろしが若干こぼれてしまった。

んで出てきたつやつやのうどんへ、ありったけの大根おろしをぶちまけ、ネギをふり、そこへ生醤油を塗す。
小泉孝太郎みたくは、しないぞ。



6杯目 『小縣屋』元祖しょうゆうどん

下に浸ってる透明な液体は、大根をおろしたときに出た汁。
これ、余計だと思ってたんだけど、いやいや、この汁が甘くて旨いの。
大根が甘いのよ。ビックリした。
もちろんうどんもバツグンに旨い。
けど、この大根は、なんなんだ?どこの大根??
生醤油との相性もバツグン。『元祖』と謳うだけあって、随分と研究してらっしゃる。
大根が旨いので、極力かき回さずに食べた。
大根の形を崩さないまま、敢えてうどんと絡めないで食べた。
大根おろしだけ、後で更に追加してみたり。
これ、替え玉したかったわ。そんなシステムはないんだけど。

インスピレーションで入った一般店だったけど、一軒目の『おか泉』と並ぶくらい美味しかった。

小縣屋様、ご馳走様でした。



天気は快晴…とは言い難いけど、良化した。
風邪は強くて冷たいのだけれど。
車に乗り込んで風を凌ぎ、ナビ子を再起動。さっきは無視してゴメン。君はいつもゴキゲン斜めのクールビューティ。
……。
改めて、琴平方面へ向かう。

前日は金刀比羅宮に直接行こうとして失敗したので、今日は琴平駅周辺へ。
あわよくば駅前で車を停めて、歩いてこんぴら参りしてやろうかと。
ナビ子の指示に従うまま車を走らせること数分。急に古めかしい町並みに入ると、ナビ子はいつもの「目的地周辺です お疲れ様でした」と事務的に労うあの台詞を言ってくれるのだ。
妙な色の電車が到着している駅のすぐ横に、有料の広い駐車場があったので、そこへデミオをつける。
時間にして16時過ぎ。
車を降りて再び寒風に身をおくと、とたんに駐車場の管理人ぽいオッサンが駆け寄ってきた。

「あんた、いまからこんぴらさん行くんか?」

とオッサンに言われて、一瞬のうちにいろいろ考えた。
つまりこのオッサンは心配しているのだろう、と。
それもたぶん、私の身を案じているのではなく、今から行けば、いつ帰ってくるかわからないからここを閉められないんじゃないかっていう、つまり自分の帰宅時間を気にしているんじゃないか、と。

「いまから行くと、時間かかりますかね?」

と、それとなく訊いてみた。

「おお、そやな。帰ってくる頃には日が落ちとるかもしれん。それに兄ちゃん、その靴で行くんか?」

と、私の安物ブーツを指して言うのだ。
どうやら道中はそれなりにでこぼこしていて、登坂路の傾斜も半端ないみたいで、と同時にそういうやり口で私を諫めるのだ。

「じゃあ、そこら辺のお土産やさんでいろいろ物色して帰ってきますよ」

と、目的をお土産一本に絞る。
んで、一応訊いてみた。

「ところで、『こんぴらビール』って知ってます?」

「俺お酒飲まんのよ、すまんの」

だってさ。はいはい。

駐車場を離れ、土産屋が軒を連ねる参道を歩く。
どのお土産屋も似たようなものばかり。それはどこの観光地でも一緒なんだけど。
でもでも、自分用に買おうと思っているお土産は、それこそ『お土産屋さん』でしか手に入らないものなのだ。



みなさま御存知、ご当地キューピー。
いつぞやにピエールから高知のご当地キューピーを貰ったので、あとは香川と愛媛と徳島のキューピーを手に入れれば、四国制覇。
というわけで、四国制覇いたしました。

まだまだご当地キューピー募集中ですので、みなさん、ワタクシめへのお土産に迷ったらば、ご当地キューピーを是非。

お土産屋で物色しがてら、店の人に

「こんぴらビール知ってます?」

と訊くも、なしのつぶて。

「あそこに地酒を売ってる酒屋があるから、訊いてみたら?」

…で、訊いてみた。

「これならありますけど…」

って、出てきたビールは『さぬきビール』。

確かにここ、地酒はいろいろあるけど、地ビールはあんまり扱ってないみたいで、さぬきビール2種類のみ。
う?む、仕方あるまい。
一応、その2種類を購入。
んで、まだまだ土産屋を物色。
あれこれ買う。手持ちのお金がなくなったので、郵便局へ。

琴平の郵便局、閑散。。。談笑している職員を見かけ、ちょっと微笑ましくなる。殺伐としている感じしか知らない私なのです。
で、お金を下ろしついでにその郵便局員へ訊ねてみたら、斜向かいの『村さ来』を指差した。



おお、確かに『ことひら麦酒工房』って書いてある。
でも、つまりこの村さ来でしか飲めないってことか…

俺、車やっちゅうねん。
ここで泊まれってか。
この村さ来のすぐ裏に『琴参閣』ってな名前のでっかいホテルってか旅館があるけど、ここ、一泊ナンボとられるかわからんし。
前日にゃ、一泊4000円の安宿に泊まってた男ですからねぇ。
どうにかして、村さ来で飲む以外の方法でこんぴらビールを手に入れる手段はないのだろうか…。
そのあともちょいちょい土産屋をのぞいては訊いてみるんだけど、芳しい返事はなく。
だけど愛想のいいおばちゃんの店で、有力な情報を聞けた。

あそこの村さ来は実は酒蔵で、その酒蔵の本体は、その『琴参閣』ってホテルの地下にある…って。
だからひょっとしたら、ホテル関係者に訊いたらあるんじゃないかと。
てなわけで、足はホテル…と言うか、温泉旅館『琴参閣』へ向いた。
売ってりゃあ御の字、売ってなかったら、宿泊費と空き部屋のあるなしを訊くだけだ。

ィヤーーン……と言う感じの擬音と共に、大きめの自動扉が開く。
いかにもこんぴら参りに来ました…ってな宿泊客をかいくぐり、一目散にフロントへ。
…と思ったら、フロント手前にお土産屋があった。
ホテル付きのお土産屋さんにしては、かなり大きい。
あっちをウロウロ、こっちをウロウロ……う?む、ない。
仕方ないか…と、諦めかけた頃、レジ横に冷蔵庫が。



興奮してブレた。むう。
見つけましたよ、とうとう。やったぜ。
二種類のこんぴらビール。
『アルト』と『ケルシュ』。
無論、両方と購入した。一本750円也。高っ。

そのほか、『灸まん』などのお土産も買い込み、ウハウハで車へ戻ったのである。
ビールを飲むのは家(ホテルじゃなくて自分の家のことね)へ帰ってからにしよう。



ここで散々土産を買った。
けど、一番大事なお土産である『カマダ醤油』をまだ手に入れていない。
車へ戻って、カマダ醤油が買えるところをナビ子に訊いてみたところ、ここからだと丸亀市の市街に直売所があると言うことを知り、そこへ向かう。

琴平を出て間もなく、日が落ちる。
2月末、まだまだ日は短い。
あの駐車場のオッサンの忠告を無視して、うっかりブーツでこんぴら参りしちゃったら、遭難してたのかも。
…って、そこまでは酷くはなかったろうけど、もし登っちゃったら間違いなく後悔してただろう。
場合によってはへこたれて、大枚はたいて琴参閣に泊まっていたのかもしれませぬ。

さて。
陽もとっぷり暮れた頃、丸亀市に到着。
「目的地周辺です。お疲れ様でした」というナビ子のいつもどおりの冷たい労い言葉を受けて車を停めたんだけど、それらしき直売所はどこにもない。
夜になったから閉まったのかな?とも思ったんだけど、いやいや、やっぱりそういうお店が見当たらない。
路上駐車したまま夜の丸亀市街地を徒歩でウロウロしてみたけど、『カマダ』という文字がまったく見当たらない。
『目的地周辺』、がしかし、その目的地はひょっとして、なくなってしまったのかもしれない。
ナビ子の情報が古かったのかもしれない。
ので、ここでの買い物は回避。明日じゃ、明日。
高松になら間違いなくある。……はずだ。

というわけで、今夜も寝床の高松へ。
ライトアップされている丸亀城をチラ見しつつ、ナビ子の先導で高松へ向かう。
もちろん、宿は今日も取ってない。
昨日の失敗(ヘボ宿)を省みて、現地で目で見て確かめてから、宿を取ろうと。

車を走らせて、CDがちょうど1枚終わるくらいの頃、渋滞を抜けて高松市街へ到着。
車に乗ったままウロウロ。
ホテルを物色。
昨日泊まったホテルに近い外観のホテルはパス。
高そうなところも、パス。よさそうなんだけど。

…で結局、ベタなチョイス、東横イン。。。
耐震偽装、なんのその。
綺麗そうだし、安そうだし、基本快適に眠れればいいので、ここでいいのだ。

「あいにく満室となっております…」

なぬ!?
なんだよ、それなりに迷った結果、ここにしたのに…
平日の高松市内の東横インって、そんなに盛況なのか!?
ちょっと意外でビックリ。

「もしよろしければ、もう一つ、市内に東横インがあるので、そちらに問い合わせてみましょうか?」

と、フロントのお姉さんが言うので、是非ヨロシク! と伝えると、お姉さんはもう一店の東横インへ電話してくれた。
部屋の確認でそれなりに時間が掛かってるみたいで、「少々お待ちください」といわれてから随分待たされた。
…で、そのときに気になっていたのは、そこに路上駐車してあるデミオが無事かってことと、あと、フロントの裏であくせく働いているお姉さんが、中村紀洋に似てるってこと。。。
昨日の飲み屋さんで見たそれとは別人なんだけど、これはこれでまた、中村紀洋に似ている。
なんだよオイ、香川には紀洋DNAでもあるってのかい??
しかも女性ってのが、ねぇ。。。残念感、大。

「お待たせしました」

と、そんなことを考えてたら、部屋が見つかったらしい。
…で、実はもう一つの東横インもシングルは満室らしく、ツインなら空いてるそうな。
でも、一人で泊まるのにツインの料金なんて支払うの馬鹿馬鹿しいじゃない。寝るだけの部屋なんだし。

「シングル料金でご案内します」

是非、そこでお願いします。即答。



もう一店舗の東横インは、先ほどの東横インのある大きな道路の同じ通り沿いにあった。
けれども通りが大きいので、そのまま同じ道を引き返しても、どこかでUターンしないといけない。
だから、別の道でぐるっと回り込む。
回り込んだその道が渋滞してて、着くのにしばらく掛かったが、無事に到着。
「ヒラノです」と名前を言うと、すぐに通してくれた。
しかもこっちの東横インはキャンペーン期間中らしく、宿泊費は4500円だった。
駐車場代が500円なので、占めて5000円也。
部屋に通された。

見よ、これが4500円の部屋じゃ!



ダブルベッド2個!!
おい、高松市のホテルでは『ツイン』っていうとダブルベッドが二つ置いてある部屋のことなのかい?!
あまりに広すぎて、「うひょー!」とか素で言ってしまった私。
普通なら、『所詮寝るだけなんだから』って、割とさめた反応をしがちな私なんですが、いやいや、この部屋の広さと、その値段の安さに驚いてしまいました。
大きなベッドが2つも置いてあるだけでなく、部屋自体がバカみたいに広いのよ。
せっかくだから、ベッドをくっつけてダブル×ダブルの、ダブルダブルベッドにしてしまえ!
…って、真ん中にある台を動かそうとしたんだけど、なにやらあれこれとテーブルの裏にあって、と同時にベッドがやたら重くて。。。
断念。ふう。
テレビをつけてみる。
東横インは無料で映画を配信していて、んで、テレビをつけたとたん、偶然、『BABEL』がちょうど始まったのだ。
菊地凛子がアカデミーにノミネートされた例の映画を、ただで観られるんだから、観ない手はない。ビールはちょっとだけお預け。

映画の詳細は、観てない人のために省く。
これはタイトルを『BABEL』にした通りの、ディスコミュニケーションを描いたものだった。
言語の違い、宗教の違い、文化の違いのなか、事件が数珠繋ぎ的にあらゆる人たちに降りかかっていく。
その最たる例が、耳の聞こえない少女という役どころだった菊地凛子だ。
もっとも『自分をわかって欲しい』という叫びを、声の聞こえない、声の出ない役柄で演じきってた。
菊地凛子が脱いだことばかりに焦点が当たっているのを、映画を観たあとはもどかしく思った。
彼女はもっと評価されていいと思う。

…とまあ、観た人に、じわっとかみ締めたくなるような感触を持たせる映画を観て、少し気分が良くなった。
その気持ちのまま、昨晩に続き、再度高松の飲み屋街へ。
同じく、珍しいものを食べたい気持ちでウロウロしてみる。
結局昨日と同じ道をたどった。つまり、『これ!』というものはないままだった。
その結果択んだ店は、昨日と同じ『カドゲン』の暖簾をくぐったのだ。



昨日と同じカウンター席へ、昨日と同じように通される。
『この人、昨日も来てたよね?』
という顔をするスタッフ。
なんなら、「昨日もいらっしゃいましたよね?」なんて声でも掛けてくれたほうが、俺としちゃあ気が楽だぞ?
一人で大衆居酒屋へ入るのって、そんなに変かね?誰か教えてくれ。
一人でサーティワンに入るよかよっぽど楽勝。

とにもかくにも、私は昨日食べた鉄板ホルモンが食べたいのだ。BABELの余韻を味わいながら。
なので、鉄板ホルモン焼きと、プレミアムモルツ。
おんなじメニュー。ふふふ。
『昨日来たよね?』なんていう感触を、敢えて実感させてやるぞ。
無意味にいい気になって、プレミアムモルツ&鉄板ホルモン。
これ、旨いのよ。
高松に再度訪れることがあったら、またこの店に来ようと思う。

さておき、ビールをぐびぐび呑んでると、後ろの席(昨日、紀洋似の人がいた席)にいたカップルの会話が聞こえてくる。
おそらく同じ職場の二人なんだろう、仕事場の誰々さんがどうのこうの、例の件がうまくいかなくてどうのこうの…と、基本的に男が話す一方。
女は興味があるんだかないんだか、生返事ばっかり。
会話の内容は俺にとってどうでもいいんだけど、この二人の微妙な距離感と言うか、仲の良くなさと言うか、おさまりの悪さと言うのが気になった。
呑みながら盗み聞き。
盗み聞きと言うのも聞こえが悪いけど、そうでなくとも耳を塞いでもない限り、すぐそこのカウンターで独りで呑んでるんだから、丸聞こえ。
会話が途切れるたびに、男が新たな話題を作るの。
ほんと、この女の人は、めっぽうコイツが嫌いなんじゃないかと疑いたくなるほど、女の人は返事をするだけ。

男「最近何か面白い映画、観た?」
女「観てない」
男「そっかあ。ねえ、俺、こないだBABEL観たんだ」
女「へぇ…」
男「あんまり面白くなかった」
女「ふ?ん…」

って、こんな感じ。
ってか、おい。
BABEL面白くなかったって、どないやねん。
さっき俺も観た観た。ほんと、ついさっきだ。
俺はそれなりに思うところがあったぞ。
ってか、女。そこはもっと突っ込んでいいだろ。てか突っ込め。俺のために突っ込め。何がどう面白くなかったのか、突っ込んでくれ。
…という、盗み聞きの俺の願いも虚しく、この女性のダルさが象徴するような会話を、延々と。
終始、男が話して女が生返事。まあ、この女性は『普通に返事しているつもりなんだけど生返事に聞こえちゃう』という、こういう人なんだろうね、きっと。
なんてことを考えつつ、あのあんちゃんがどうしてアレをつまらないと思ったのかも考えつつ、同時に、BABELを思い返して反芻してみたりして、ビールを傾けてホルモンつついてたら、結構な時間が過ぎた。
なんなら後ろの妙なカップルはいつのまにか帰っていた。
一人で考え事を始めちゃうと、ときどきすげぇ時間が経ってるときがあるのよね。思っている以上に時間が過ぎちゃってる。
んで、さんざん呑んだし、なにかで〆て帰ろうと、メニューを取った。
お茶漬けとか焼きおにぎりとかを食べてから帰ろうってな魂胆でメニューをとったんだけど、一番気を惹かれたメニューは、

『やきうどん』

だった。
うどんの本場、讃岐で『やきうどん』。
これは、いかがなものなんだろう。
焼く必要のないものを、敢えて焼くその心意気。これ一つください。



7杯目 『カドゲン』焼きうどん

これを讃岐うどんの一つとカウントしてもいいのだろうか。
いや、いいのだ。
鉄板で炒めたうどんはモチモチ。
他のどのうどんでも味わえないモチモチ感。
香川独特の甘いダシ醤油を使ったことで、若干明るい焼き色と、甘い感じの口当たり。
ビールに合ううどんとしては、バツグン。お腹へってたら、もう一つ食べられそうな勢いだった。

プレミアムモルツもホルモンも焼きうどんも、そして周りの客も、メッチャ良かった。
カドゲンさま、ご馳走様でした。また来たいと思います。



ホテルへ帰ってきたのは、日付の変わる寸前。
帰り際、夜中なのに開いてるうどん屋を見つけて、入ろうか迷ったりもしたんだけど、お腹はそれなりに膨れていたので、コンビニで甘い物を調達して帰宿。
甘いもの(主にチョコレート)を散々頬張って、歯を磨いて寝た。またこの日も備え付けの風呂には入らず。

翌朝、起きたのは受付のお姉さんの甘い声。
モーニングコールを頼んだわけではない。
つまり、寝すぎたのだ。
前日のはゆっくりしすぎた寝坊だったけど、今日は完全に寝坊だ。
「チェックアウトのお時間となりましたが…」
「はい、今出ます!」
と、実は今起きたにもかかわらず、まるでもう出る準備は出来ていたかのような物言い。
…おそらく、電話で起きたことはバレバレなんだろうけど、瞬時のうちに働いた防衛本能の成せる業か。
ごちゃごちゃ言うとらんと、さっさと着替えて早足で出撃。
チェックアウトを済ませる。ありがとう、いい部屋でした。いい部屋すぎて寝過ごしちまいました。。。

出るついで、車だけ、もう少し置いてはおけないものかと相談。
にべもなく断られた。顔は結構かわいいお姉さんなのに、にこりともせず、文字通り、にべもなく。
宿泊を続けるお客様なら駐車場を貸しては置けるらしいんだけど、俺、今日で帰っちゃうんで。しゃあない。
ここへ車を停めておきたい!と私が思うのも無理はない。
本日の一軒目のうどん屋として考えていたのは、このホテルから徒歩で行けば2分ほどのところにある、松下製麺所。
朝の7:30からやっているし、うどんはシンプルなものだし、『モーニングうどん』にゃあ、もってこい。
…10時過ぎにホテルを出ているわけですが。
とはいえ、本日のメインと定めているのは11:00から開店する『竹清(ちくせい)』。
ここもホテルからかなり近い。けど開店は11時から。
どのガイドブックを見ても、必ず大きく載っている市内の人気店。
ガイドブックすべてに、天麩羅が掲載されているのだ。
一昔前までは、『俺はうどんが食べたいのだ、決して天麩羅が食べたいわけではないのだ!』なんて、つまんないこだわりを爆発させているところ。
いやいや、天ぷらにしろうどんにしろ、うまいものが食えれば、それでいいじゃないか。うむ。
ってなわけで、おいしそうな写真につられて、その店をグランドフィナーレに設定。
んが、開店前に、もう一店舗寄るのだ。



ナビ子に頼る必要もなく、車を、ホテルのすぐ裏にあったコインパークへ停める。
松下製麺所の地図を片手に、車を降り、徒歩で向かう。
高松はメインストリートを抜けると、けっこう閑静なのだ。
主要道路の交通量の半端なさを考えると、ちょっと不思議に思えるほど、裏通りには人がいない。
ちょろちょろと路地を抜けると、目的としていた『松下製麺所』のみすぼらしいたたずまいが目に入ってきた。



こんなふうに、街中にフツーにぽつねんとあると、ちょっと躊躇ってしまう。本当にここであってるんだろうか。
でも軒先に近づくと、うどんのだしと思わしき香りが漂ってきて、そのまま暖簾をくぐってしまうのだ。
食欲に負ける瞬間。

店の中も、外のたたずまいから想像するものに遠くない、至ってシンプルな構造。
カウンターに並び、うどんを注文。
外は寒いし、朝(といっても10時過ぎ)だし、あったかいのを注文。
うどんはもちろん、一玉。150円也。朝から2玉食べて、すぐおなかいっぱいになっちゃう…という、昨日のような失敗はしないぞ。
…でも、半熟卵はトッピングさせてください。
うどんが出てくるちょっとした合間に、スタンプラリーへハンコを押す。これで4店舗目。
出てきたうどんを、カウンターの前にある湯だまりへ。
ざるにうどんの玉を入れて、湯に浸して温める。
程よく温まったところでざるをあげ、どっかの有名ラーメン屋店主みたいにバサバサと派手に湯を切る。
器に盛り、ダシツユを注ぐ。
そんでもって、テーブルにあるネギを入れ、天かすを入れ、はい、完成。



8杯目 『松下製麺所』かけうどん

あらおいしそう! モーニングうどんに最適な感じ!
しかも、製麺所独特のセルフな手際もバッチリ。もう3日目ですもの、そりゃあ、手際も良くなります。
私の後に入ってきた、いかにも『つい今しがた、高松に到着しました』といったいでたちのカップル(二人とも、手に手に大きな旅行カバンを持っていたのだ)も、私の注文する様を模倣して、同じうどんを手に取っておりました。
おお、まるで熟練讃岐er(さぬかー)。
……。
さてさて、うどんを。

朝食べるうどんとして最適な、つるつるの歯触りに、適度なコシ。
イリコだしが効いてる、温かなつゆ。香りも良い。
あったかいスープを飲んだ時に出る、独特の溜め息までもがおいしい。
半熟卵も、黄身のとろけ具合がちょうどよく、適当に麺に絡まるのだ。
1玉なんて、あっというま。ごちそうさまでした。



さてさて。
ちょっと早いけど、もう『竹清』に向かおう。
車はそのままコインパークへ据え置き。
松下製麺所から、歩いて10分もかからないところにあるのだ。
ところが、アタクシ、持ち前の方向音痴っぷりを炸裂させてしまい、細い小道を歩きつつ、わけのわからんところへ出てしまった。
なのでいったん、広い通りへ出直して、大きい道沿いに地図を追った。
一度大きい通りへ出てしまえば、あとはとある交差点を左へ曲がるだけというわかりやすい道のりなので、すぐに竹清へ到着した。
まだ開店10分前で、1番乗り!…と思いきや、先客が2名。
ってか、さっき松下製麺所で俺に倣ってうどん食ってた、さっきの『つい今しがた、高松に到着しました』カップルじゃん。
ちょこっと道に迷っているうちに、先を越されてしまった。。。
ま、いいや。それでも3番目。
行列が行列を作るのか、はたまた本物の人気店なのか、「3番目だ?♪」なんて喜んでいるうちに、私の後ろにはあれよあれよと列が伸び、開店前にはざっと20人を数えるほどの大行列に。
今か今かと暖簾が掲げられるのを待ちわびる。
「お待たせしました?」と、天ぷらの油のにおいのするおばちゃんが、暖簾を掲げて店を開ける。
例のカップルに続いて3番目に並ぶ私は、カップルが天麩羅を何にするかを迷っているうちに、私はさっさと、半熟玉子の天麩羅&竹輪の天麩羅を取って二人を抜き去り、ポールポジションに。
結果的に一番目にうどんの玉を注文。
寒い中、外で待たされて体も冷えたため、ここでもあったかいうどんを一玉注文。
松下製麺所同様のシステムも手際よく行い、ネギと天かすをいれ、完成。



9杯目 『竹清(ちくせい)』うどん

天麩羅、でかっっ。
うどん140円、天麩羅1つ90円×2で180円。320円でこのボリューム。
うどんは勿論言うまでもなく、讃岐の王道的な強いコシのある麺に、ツルツル感を楽しめるのど越し。
つゆのコクが他店舗に比べて若干濃い気がした。
後で気づいたんだけど、天麩羅のことも考えての、若干濃い目のダシだったのではないかと。
そう、ここは天麩羅がすごかった。
某使い回し料亭に見習ってほしいほど、ここの天麩羅は驚くほど衣がサクサクしていた。
半熟卵の黄身が溶けて、パリパリの衣と一緒に口の中に入れると、幸せな笑みが自然とこぼれる。
この天麩羅、たぶん私がいままで食べた度の天麩羅よりも、うめぇ。
ボリュームもすごいし、いうことなし。
あっという間に完食。
店を出る頃には、中から外へ長蛇の列が。
みんな、ここ、うまいよ。かなりうまいよ。ってな目線を列を成す人々へ向け、店を後にした。ごちそうさまでした。



竹清が思った以上にボリュームがあったため、ここでしばし休憩。
とか言いつつも、次の店を決めてないんだけど。
松下製麺所と竹清は目的としていたので、ここでボーダーはクリア。今回の旅の中で、食べようと思っていたうどんのすべてを食べたことになる。
…で、ここで思い出した。
もう一つ、やり残したことがあったのだ。

『カマダ』のダシ醤油を手に入れなければ。

コインパーキングへ戻って、デミオのエンジンをかける。
発進するわけではない。
眠っていたナビ子を、起こしたのだ。
ナビ子の力を借りて、ここから一番近い、鎌田醤油のありかを探ってもらう。
この駐車場から1km強歩いたところに鎌田醤油の直売所があることを知る。
丸亀のそれはなくなっていたけど、高松市内なら、間違いなくあるだろう。
ナビ子の表示した、直売所までの道のりを頭の中に叩き込み、目的地まで徒歩でGO!

お昼時になって日の照ってきた高松市内を手ぶらで練り歩く。
『手ぶらで歩く人』ってのは、傍から見ると若干怪しい。
そこいらを歩く人ってのはたいてい、なんらかの手荷物を持っているものだ。
手ぶらで、きょろきょろと道を見回しながら歩く30代半ばの男一人。
町には『怪しい人を見かけたら110番!』なんて防犯ポスターもある。
俺、知らない間に通報されてたらどうしよう…
一応、道は知ってるんだけど、怪しまれないために道を聞いてみようかしら…
なんて思いながら歩いているうちに、ついてしまった。



おお、鎌田醤油。間違いない。
ずいぶんと小さな店の中へ入ると、先客が一人。おそらく地元のお客さん。
あれやこれやと多種多様の醤油を買って、帰って行った。

「なんにいたしますか?」

と、軽妙な口調で聞かれた。

「お土産を探しに来たんです」

と答えると、



このセットを出してきた。

目的としていただし醤油に、低塩だし醤油、ぽん酢醤油、サラダ醤油、さしみ醤油…
いろんな醤油が入ったお徳用セット。
おお、これ、いいじゃん。

「これください」

と、そのほか、大きめのだし醤油(自宅用)を2本買って、満足げに店を出た。

…けど、さすがに醤油、重いのなんの。。。
こんなにいっぱい買いこむ必要は、なかったのかも。
味さえ確かなら、あとでネットで注文もできたはずだし。

とにかくこのあと、デミオの停めてあるコインパークまでの道のり、『手荷物のない怪しげな男』ではなくなったものの、『重そうなものを持って大変そうな人』状態で歩いて帰ったのです。。。



さて。

おなかは適当に膨れている。
もう一杯くらいなら、無理しない範囲内で食べることができそう。
デミオへ戻って2冊のガイドブックを見回して、ある程度、本日3軒目のうどん屋へ照準を定める。
まあさすがにガイドブックに載るだけあって、どれもこれもウリははっきりしている。
でもだいたい、このコインパーキングからは若干遠め。行くとなるといったん車を出さないといけないっぽい。
ん、まあ、急ぐ必要はないんだ…と、車の止めてある近辺を散歩してみることにした。

再び『手荷物のない男』になり、高松の中心街へ向かって北上。
あてもなく彷徨ううちに、さきほどのうどん屋『竹清』の前を通りかかる。



開店時の勢いはなくなったものの、昼時だけにまだまだ行列は続きそうだ。
ここのうどん(というか、天麩羅)はうまかったから、なんならまたここでもいいか…と、列に並びかけたんだけど、やめ。
まだ歩いてから考えたっていいはずだ。
ってんで、道路をまたいでさらに北上。
高松をぷらぷらしていると、ビジネスマン&OL風のスタイルな、どちらかというとお固い職業の方々との遭遇率が高くなってきた。
ランチタイムに職場を出て、お昼を摂ろうというところであろう。

ちっちゃな軽自動車に列ができていて、その先頭をみると、メロンパンを買っていた。
メロンパン、うまいんだろうか…
というか、ここは高松なんだから、いやいや、やっぱりうどんですよ、みなさん!
あなた方は地元民だから、たまにはうどん以外のものも食べたい…ってなところでしょうけど、『たまには』にとどめといてください。
アタシゃわざわざうどん食いに来てるんですから、やっぱりうどんなんです。

…とかなんとか、誰も聞いていない心の叫びをそっと胸に秘めたまま、さらに歩く。メロンパンを焼く、香ばしい匂いに後ろ髪ひかれながら。

お固い服装が多かったのも無理はない、歩いていたここは『県庁通り』という名前の道路。
すぐそこに見える、やや大きめで若干古めのビルディングは、香川県庁なのだ。
香川県庁を横目に歩くと、人々がこぞって、あるうどん屋へ入っていくのが見えた。



徒歩で来たり、自転車で来たり、人はひっきりなしに入っていく。
けど、店内は簡素ながらも広く、それは学食のイメージに近い。
客の回転率ももちろん速い。
だから、入っていく分、出ていくのだ。
ガイドブックをケツのポケットから取り出し、ぺらぺらとめくるんだけど、記載はなし。
スタンプラリーの紙には、同じ名前の店が載っていたんだけど、紙に載っている店は宇多津町。ここは香川県庁前。
県庁から来ました!ってな人が、首から身分証提げて列に足を連ねております。
ガイドブックにも載っていないここを、よし、この旅最後のうどんとしよう。
暖簾をくぐって、私も列に足を連ねた。

列の流れは速く、すぐに注文、すぐに出てきて、すぐにそのへんの席へ着く。
県庁の人のみならず、ドカタのお兄さんや学生さん、カップル、郵便局員などなど、いろんな人が同じ大きなテーブルでうどんをすすっている。
ここはまさに高松の中心、香川の中心なのだ。



10杯目 『さか枝』ぶっかけうどん

よく考えれば、ぶっかけうどんはこの旅で初めて注文したのかもしれない。
さぬきうどん=ぶっかけうどんという方程式は今も昔も変わらないのに、この旅で最後に食べるうどんだけがぶっかけうどんってのも、不思議だ。
とくに選んでそうしたわけでもなく、最後だけ、ぶっかけうどん。
食べる。
うまい。
他のうどん屋と比べると、若干麺が細い気がしたんだけど、いやいや、この細い(といってもうどんだから、それなりの太さはある)麺に麺つゆが絡んで、青々したネギと天かすが匂いと触感をアップさせていて、充分うまかった。
麺の太い細いは、あんまり関係がないんだなってことを知った。
天麩羅は、ちくわ天。
竹輪の天麩羅って、学校給食で出てきた…くらいのイメージしかなかったんだけど、香川でうどんのお供と言えば天麩羅である、ということを、この旅でよくわかった。
んで、どこの店にも必ずあるてんぷらは、ちくわ天。
この良し悪しが、店の天麩羅の良し悪しなんだろう。
ここのちくわ天は、やらかかった。
柔らかい…ではなく、やらかい。
気持ちよい触感を含んだやらかさが、ちょうどぶっかけの冷たい感じとマッチしていたような気がした。
天麩羅に塗してある青のりが、なおさら学校給食のちくわ天っぽくてよかった。
一気食いに近い勢いで食べた。
まだまだお昼時、どんどんお客さんが流れてくるわけで、悠長に余韻に浸るのは店を出てから。
『さか枝』様、ごちそうさまでした。



帰り道、飛行機までにはまだ時間があったので、立ち寄り湯で温泉へ。
貸し切り状態で1時間ほど、旅の疲れを癒した。
そしてそのままマツダレンタカー高松空港前店へ。
さよならデミオ、さよならナビ子。また会う日まで。

空港の中で散々お土産を買って、羽田行きの飛行機へ搭乗。
四国が遠のいていく感覚を背中で感じた。
羽田から新百合ヶ丘へ向かうバスの中では、早くも四国へ帰りたい気持にあふれていた。

家へ帰ってきてから作った何となく食べたくなって冷凍うどんの、おいしくなさは味だけじゃなかったはずだ。

四国、また行こうと思う。
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この記事のコメント

 アドバイスミスしました、すみませんw
 そういえば、私の初のさぬきうどんツアーの時の一件目もおか泉でした。

 もう二年も四国へ行っていませんが、行きたくなりますね~
2008-06-03 Tue 21:33 | URL | Yoshirin #r42p9nG.[ 編集]
いやいや、むしろアドバイスは的確だった。
だって、よしりんがああいうアドバイスをくれなかったら多分、辛いのが好きな俺は、倍以上の芥子を入れていたと思う。
そうなったら、だいなし。

俺、今年中にもう一度、いや、もう二度くらい四国行きたい。
もちろん、うどん食って温泉入るために。

『二度』と言うのは、奥さんがうらやましがるから、一度は家族旅行として行かなければならないな、と。
もう一回は、ぶっちゃけ今年じゃなくてもいいんだけど、いきなり死んだりしないうちに、忘れないうちに、また行きたい。
四国とか沖縄とか、島国が好きなのかも。

うちの実家近辺で、セアカゴケグモが出たらしい。どうでもいいけど。…いや、よくないか。
2008-06-06 Fri 00:31 | URL | ようすけ #Zk.h..Io[ 編集]

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